Tokanai et al. (2021)

Tokanai K, Kamei Y & Minokawa T (2021). An easy and rapid staining method for confocal microscopic observation and reconstruction of three‐dimensional images of echinoderm larvae and juveniles. Development, Growth & Differentiation 63: 478-487.

概要

不透明で、かつ、解剖するには小さい動物の内部構造観察は、技術的に困難な場合があります。棘皮動物の後期幼生や変態後の幼若個体は、不透明であるうえに内部構造が複雑で、しかもサイズは直径1 mm前後と小さく、肉眼による解剖や観察が困難です。棘皮動物の後期発生研究では、以前から組織切片観察技術が用いられてきましたが、この技術は標本作成と観察に手間と時間がかかるため、発生にともなう立体構造の変化の解析など、多検体の比較解析が力を発揮する分野は、研究が進んでいませんでした。

我々は棘皮動物ウミユリ類後期幼生の内部構造解析用に、透明化した固定標本の共焦点レーザー顕微鏡による内部構造解析技術を開発しました(Amemiya et al. 2019)。この技術の特徴は、透明化技術として一定の評価を得ているBABB法を基礎として、組織・器官の微細形態解析に必要な多数の光学切片取得を可能にする新規染色技術にあります。本技術で用いるナイルブルーは生体染色等で旧くから用いられている色素ですが、極めて強い蛍光を発するだけでなく、褪色しにくいため、共焦点レーザー顕微鏡での繰り返し観察が可能です。本論文では、Amemiya et al. 2019の技術と、ウニ類の変態直後の幼若個体用に改良した技術を紹介するとともに、更なる改変のヒントも提供しています。


個体発生過程における形態の変化は、発生生物学研究の基礎ですが、必ずしも充分な知見が得られているとは限りません。新たな形態解析技術の開発は、発生学研究の更なる発展に極めて重要です。
本論文はDevelopment, Growth and Differentiationの特集号Methods & Protocols (part 2)に掲載されました。

【参考文献】Amemiya, S., Hibino, T., Minokawa, T., Naruse, K., Kamei, Y., Uemura, I., Kiyomoto, M., Hisanaga, S.-I., & Kuraishi, R. (2019). Development of the coelomic cavities in larvae of the living isocrinid sea lily Metacrinus rotundus. Acta Zoologica, 100, 414–430.