概要
近年，河口域や内湾の干潟に棲息するシオマネキ類が同所的に棲息するより小型のカニ類を捕食することが分かってきた．ヒメシオマネキは干潮時，巣穴の周りで，あるいは巣穴から汀線へと移動して摂餌をする．同じ干潟に棲息するミナミコメツキガニも同様に２つの場所で摂餌行動を行う．ヒメシオマネキとミナミコメツキガニの摂餌行動をヒメシオマネキの捕食活動と関連させて調べた．ヒメシオマネキは巣穴の周辺で活動しているときのみにミナミコメツキガニを捕食した．また，ミナミコメツキガニはヒメシオマネキの巣穴形成域に近づかなかった．一方，巣穴を離れると両種は互いに接触しても捕食や排他行動を示さなかった．このように，ミナミコメツキガニは巣穴に留まっているヒメシオマネキを正確に識別し，互いに巣穴形成域を分けており，捕食を引き起こす条件が両種の棲み分けを引き起こしていることが示された．