Hou et al. (2021)

Hou S, Zhu J, Shibata S, Nakamoto A, Kumano G (2021).Repetitive accumulation of interstitial cells generates the branched structure of Cladonema medusa tentacles. Development 148: dev199544.

概要

大学院生のHouさんが行った研究です。この論文は、Development誌(Volume 148, Issue 23, 2021)にResearch Highlightとして紹介され、また、Faculty Opinions (former Faculty of 1000)に推薦されました。

動物の組織や器官はその機能に適した固有の形を採り、その形成過程では、最外層の上皮細胞と裏打ちする中胚葉細胞との相互作用が重要であることが知られています。特徴的な器官形態の1つである枝分かれについても、近年のショウジョウバエや哺乳類の研究から、中胚葉からのReceptor Tyrosine Kinase (RTK) シグナルによる上皮シートの変形によることがわかってきています。

本論文では、中胚葉を持たない二胚葉性動物であるエダアシクラゲの枝分かれした触手を研究材料にして、上皮・中胚葉相互作用に依存しない動物における新たな形づくりの仕組みを明らかにしました。すなわち、ヒドロ虫綱に特有の多能性幹細胞であるinterstitial cell(I-cell)が、枝触手形成に先立って主触手上の枝分かれ部位に枝形成ごとに繰り返し集積してくること、集積したI-cellからは枝触手を構成する上皮細胞など複数の細胞タイプが生じてくること、この枝触手形成・伸長過程にRTKシグナルが必要であること、などを明らかにしました。

これらの結果により、二胚葉性動物の形づくりにおいては、多能性幹細胞が中心的な役割を果たすことがわかりましたが、同時に、一見複雑な枝分かれ構造も単純なルールの繰り返しによりつくられることや、RTKシグナルが必要であることなど、広く動物界に渡って共通の仕組みが利用されていることも確認できました。