福森ほか(2023)

福森啓晶・中山 凌・阿部広和・鷲尾正彦・杉本 匡(2023)陸奥湾における外来種シマメノウフネガイの初記録および浅虫水族館所蔵標本に基づく宮城県沿岸への侵入履歴.みちのくベントス 7: 63–69.

概要

シマメノウフネガイは北アメリカ西岸を原産地とし、主に巻貝や二枚貝の殻に付着して片利共生生活を送るカリバガサ科の巻貝(腹足類)です。本種は侵略的外来生物として知られ、原産地から8,000 km以上離れた東アジア諸国での定着が確認されています。日本への移入経路は成体の船舶付着や幼生のバラスト水運搬によると考えられ、時に移入先の水産有用貝類に過剰に付着し、漁業被害をもたらす事例が知られています。

日本では1968年に神奈川県三浦半島で最初に発見された後、侵入初期から比較的急速に国内での分布域を拡大させたと考えられており、近年も新産地の報告が相次いでいましたが、青森県での記録はありませんでした。

本報告では、青森県陸奥湾での野外調査により、シマメノウフネガイの分布を初めて確認しました。本種は、主にヤドカリや二枚貝の貝殻上などに付着しており抱卵個体やペア形成個体も見つかったことから、既に県内で定着している可能性が高いことが推定されました。また、青森県営浅虫水族館と共同で貝類標本調査を行ったところ、既に1970年代には宮城県でシマメノウフネガイが生息していたことが確認されました。在来種との競合や水産業への影響を考える上で、今後シマメノウフネガイ陸奥湾集団の経年的な分布拡大や個体群変動を注視することが必要です。