ミサキギボシムシ
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ミサキギボシムシ
Balanoglossus misakiensis
ギボシムシ網ギボシムシ科オオギボシムシ属.海底の砂底に穴を掘って生活している体長20cmくらいの細長い動物.夏,浅虫サンセットビーチで海水浴をしていても決して目にすることはないが,実はあなたの足下の砂中にはこの奇妙で興味深い動物が密かに生きている。大潮の最干潮の時,膝くらいの深さのところで砂底を掘ってみれば、運が良ければ見つけられるかもしれない.図鑑には「ヨードホルム」臭を発すると書かれているが,確かに強烈なにおいである.においも強烈だが,その鮮やかな黄色の体色も鮮烈.ギボシムシは半索動物というグループに属する.半索動物は棘皮動物(ウウニ・ヒトデ・ナマコの仲間)と脊椎動物(ホヤ・ヒトを含む仲間)の両方と近縁であり,我々・脊椎動物の進化を考える上でとても重要.最近は世界中にギボシムシに注目する研究者が増えている.長らく,能登半島と房総半島より北には生息が確認されていなかったが,2012年,我々は本種が陸奥湾にも生息することを明らかにした.
センターとミサキギボシムシ
【ミサキギボシムシ Balanoglossus misakiensis を対象とした論文】
以前より、浅虫の研究者による砂浜海岸調査の際に、ギボシムシ類の断片らしいものが採集されることが稀にありました。近年の新口動物の進化発生学的研究におけるギボシムシ類の重要性を考えると、浅虫周辺に生息するギボシムシ類が何という種なのかを明らかにし、研究対象として提供するための基盤を整えることは重要です。そこで、2005年頃より、センタースタッフによるギボシムシ類の調査が進められてきました。その結果、陸奥湾には少なくとも二種類のギボシムシ類が生息し、その一方はミサキギボシムシであることがわかりました*。
センターではミサキギボシムシの採集法と飼育法の改良を進めるのと同時に、この種の研究を希望する外部研究者に材料提供を行なってきました。浅虫のミサキギボシムシを対象とした研究の成果は以下の四論文として発表されています。
*阿部広和、鷲尾正彦、山嵜敦子、美濃川拓哉、西川輝昭 (2012)
青森県陸奥湾における半索動物ミサキギボシムシBalanoglossus misakiensis Kuwano, 1902の初記録
青森自然誌研究 17: 25-27.
Kaul-Strehlow S., Urata M., Minokawa T., Stach T. and Wanninger A. (2015)
Neurogenesis in directly and indirectly developing enteropneusts: of nets
and cords
Organisms Diversity & Evolution 15: 405-422.
Sonobe H., Obinata T., Minokawa T., Haruta T., Kawamura S., Wakatsuki S.,
Sato N. (2016)
Characterization of paramyosin and thin filaments in the smooth muscle
of acorn worm, a member of hemichordates
Journal of Biochemistry 160 (6): 369-379
Kaul-Strehlow S., Urata M., Praher U., and Wanninger A. (2017)
Neuronal patterning of the tubular collar cord is highly conserved among
enteropneusts but dissimilar to the chordate neural tube
Sci Rep. 2017 Aug 1;7(1):7003. doi: 10.1038/s41598-017-07052-8.