研究内容

最近の論文から

田村研で発表した原著論文の紹介がこちらにあります。→ 最近の論文から
または図をクリックすると最新の論文の紹介がご覧いただけます。

  • Yoshida et al., 2020
    Yoshida et al., 2020
  • Uemoto et al., 2020
    Uemoto et al., 2020
  • Hamada et al., 2019
    Hamada et al., 2019
  • Egawa et al., 2018
    Egawa et al., 2018

わたしたちの研究が目指すもの

 私たちの研究室は、2007年の発足以来「器官形成分野」を名乗ってきましたが、2018年度から研究分野名を「動物発生分野」に変更しました。動物発生学という、とても広い学問分野を名前にしましたが、「東北大の動物発生は、ああ(・・)いう研究をしているのだな」と覚えてもらえればありがたいです。「ああ(・・)いう研究」とは、、、?
 私たちの研究室は、動物の形づくりに興味を持って研究をしています。私たちヒトを含む脊椎動物の形(形態)の基本は発生過程で作られます。たとえばヒトの指は5本ですが、赤ちゃんの手を称してモミジのような手と言うように、生まれたばかりの赤ちゃんの手でもすでに5本の指があります。母体中でヒトが発生する間に、5本指の基本形態が作られるからです。
 動物の形、例えばあごや目、耳、あるいは尾のような外部の形態も、脳や心臓、腸、腎臓のような内部構造の形態も、特定の形をとることで、適切な機能を持つようになります。したがって、どのように形が作られるのかは、ヒトの成り立ち、また地球上の多種多様な生物の存在を理解するために、非常に重要な問題です。このような形態は、胚(発生中の生き物)に内在するプログラムによって作られます。どうやって顔に目が2つ作られ、手に5本の指が備わり、心臓に4つの部屋が作られるのでしょう。わたしたちは、動物の形づくりの発生プログラムがどのように働き、それぞれの器官に固有で機能的な「かたち」をつくるのか、をさまざまなアプローチで研究しています。

研究の概要

(クリックで拡大)

 以下に、わたしたちが進めている研究を大きく4つのテーマに分けて説明しています(上図参照)。ただしこれらの研究は厳密に分けられるものではなく、どのテーマも相互に関わりあっています。

四肢と鰭(ひれ)の発生

 四肢(手足)の元となる胚の構造(原基)を肢芽(しが)といいます。肢芽は胚の体側の決まった位置に4つ作られ、伸長しながらいろいろな骨(腕や手首の骨、指の骨など)を作ります。どうやって胚の決まった場所に肢芽を作り出すのか、どうやって伸長する肢芽の先端に指が作られるのか、私たちは四肢を形作る発生プログラムを明らかにしようと研究しています。
 発生プログラムの一つの見方は、遺伝子機能の組み合わせです。いくつもの遺伝子がネットワークを構成しながら機能し、それに従って細胞が動きます(増えたり死んだり、動きまわったり、分化したり)。組織や器官は、それらの細胞が集合して形づくられていきます。細胞が活動して形を作るためは、数多くの遺伝子の制御が必要です。実際にどのような遺伝子ネットワークが機能して手足の形態が作られるのかを調べています。
 サカナが持つ対鰭(ついびれ、胸鰭と腹鰭)は、四足動物の四肢と同じものです。対鰭の原基(鰭芽、きが)も、四肢と同様に発生過程で作られ、肢芽とおおよそ同じ遺伝子機能の元に形作られます。鰭芽と肢芽の共通の発生プログラム(たとえば鰭芽がどこからどうやって生えてくるかや、鰭芽と肢芽に共通の上皮構造の機能など)を明らかにすることで、私たちは発生における形づくりの普遍的なメカニズムを理解したいと考えています。

四肢と鰭の多様性と進化

 四肢と鰭の発生過程の構造(肢芽や鰭芽)はよく似ていて、同様の発生プログラムによって作られます。ですが、それにしても出来てきた最終的な形態はかなり違います。その違いは、共通の発生プログラムの一部が違っていて、その結果として生じてくるはずですが、いったいどこが違うのでしょうか。
 太古の脊椎動物が陸上進出するにあたって鰭から四肢へと形態が進化したと考えられていますが、四肢と鰭の発生プログラムの違いを理解することで、遠い昔にどうやって鰭から四肢へと形態が進化したかを推定することができるかもしれません。あるいは、たとえば鳥は羽毛を持ち、なかでも風切羽を利用して飛翔しますが、鳥類の祖先である肉食恐竜も風切羽と似た構造を持っていたとされ、同様の発生プログラムを用いて風切羽を作っていたと推定されます。その発生プログラムの実体は何なのか、ゲノム配列情報解析から解剖学的形態観察までといったさまざまな観点で形態の多様性と進化の創出メカニズムを研究しています。
 動物間の形態の違いを生み出す発生プログラムの理解から、過去にどのような変化があって動物形態が進化してきたかを推論することが大きな目標です。

四肢と鰭の再生

 ヒトの手足は切断されてしまうと二度と生えてくることはありませんが、切られた腕を自在に再生させられる動物がいます。両生類です。また、鰭は四肢の相同構造ですが、魚類は鰭の骨構造の一部、鰭条(きじょう)の形態を再生することができます。どうして彼らの構造は形態ごと再生できるのに、わたしたちの体はほとんど形態を再生させることができないのか。形態再生できる動物からそのメカニズムを理解することを中心として、再生できる動物とできない動物の差を考察する、再生能力の種間差比較研究を行っています。
 現在は、魚類の鰭を用いて形態再生の研究を中心におこなっています。魚類の鰭、たとえば尾鰭は双葉型をしていますが、これを直線状に切断しても元通りの双葉型に再生します。このことは魚類の鰭も形態の再生が可能であることを示していますが、その形の再生メカニズムはほとんど明らかになっていません。また、胸鰭にある二種類の骨格(鰭条(膜性骨)と内骨格)のうち魚類(真骨魚類)が再生できるのは鰭条骨だけで、内骨格は再生しません。同じ由来を持つ骨なのにどうして鰭条は再生できて内骨格はできないのか、その理由もほとんど不明です。遺伝子操作や遺伝学的解析が容易なゼブラフィッシュの利点を活かして、これらの形態再生のメカニズムを理解する研究を進めています。