光合成の生理生態学講座

 光合成系の順化

 

 

 この項では生育環境による植物の性質の変化、すなわち順化(acclimation)を扱います。高校の教科書にものっている、陰葉・陽葉の違いがこれにあたります。短期的応答に対し、長期的応答(Long-term response)とも呼びます。順化という言葉は、人によって使い方・意味が微妙に異なるのですが、私は順化と長期的応答をほとんど同じ意味で使っています。

 「なぜ?」という問いには2種類あります。たとえば、「なぜ渡り鳥は冬に南に行くの?」という問いに答えてみましょう。一つの答は「冬になるとホルモンバランスが変わり、南へ飛びたい、という欲求が生まれるから」というのが考えられます。もう一つは、「冬に南に行くと、南の方が暖かいので死亡率が下がり、子孫の数が南に行かなかったものよりも多くなるから」というものです。どちらも間違いではありません。ただ、前者はそのメカニズム(how)について答えたものであり、後者はその意義(適応的・進化的意義、why)を答えたものです(Pianka 1983)。

 生態学者として光合成を扱っている身として、順化は最も興味深い対象の一つです。環境変化に伴ってある変化が見られたときに、そこにはどのような適応的意義があるのでしょうか? しかし、全ての変化が適応的なわけではないはずで、その環境に適応できなかった結果としてなんらかの変化が起こることもあるでしょう。単にどう変わるかだけではなく、そのwhyを探ることが私の研究目標の一つです。

 

目次

 

光順化

栄養条件

二酸化炭素順化

温度順化

老化

 


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