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微小脳解析 / Microbrain Analysis
教 授
嶋 田 一 郎
[ 研究室紹介 ] [ ishimada@mail.tains.tohoku.ac.jp ]
助教授
水 波 誠
[ 研究室紹介 ] [ makoto@biology.tohoku.ac.jp ]
技 官
小 金 澤 雅 之
[ kogane@mail.tains.tohoku.ac.jp ]
大学院前期課程:4人 / 大学院後期課程:1人
嶋田研究室 昆虫の味覚と摂食行動
 ハエの味覚受容体が、如何にして各種味分子を識別しているのかを明らかにするのがテーマの1つです。これまで、種々の味覚受容体を同定し、それらが各種味分子に対し、相異なる厳格な構造特異性を有することを解明してきました(図1)。最近、ヌクレオチドに反応する新たな複数の受容サイトの存在を明らかにしました。それらは異なる味覚受容細胞上にあって分子特性も異なっており、その生理学的意味に注目しています。さらにGタンパク質が介在する味覚受容細胞内の情報伝達機構におけるセカンドメッセンジャー系として、IP3とcGMPの役割を明らかにしつつあります。また、分子生物学的手法により味覚受容体遺伝子の探索も行っています。

 摂食行動の定量的解析を行うことにより、ショウジョウバエのショ糖濃度識別感度がウェバー比0.025という、これまでに報告された最高のものであることを明らかにしました。このショウジョウバエの鋭い餌選択のメカニズムの解明が、第2のテーマです。また、その中で摂食行動の自動解析システムを開発し、行動の時間構造に自己相似的パターンを示す「フラクタル行動」を初めて見いだし(図2)、その数理モデルを提出しました。現在では、行動の様々な局面や種を越えて様々な動物に見いだされつつあり、フラクタル行動は何ら特殊なものでも異常なものでもなく、動物の行動に本質的なものであるこことが示唆されています。また最近では、突然変異体を用いた実験により餌選択に学習過程が関与することが明らかとなり、学習・記憶に関する研究も行っています。


図1:ハエ味覚糖受容細胞上の複数の受容サイト
図2:A.コッホ曲線、B.歩行活動のフラクタル性。縦軸は歩行速度、横軸は観測時間、C.摂食するショウジョウバエ

参考文献

1) 嶋田一郎 (1992) 動物のフラクタル行動 (分担執筆) 松下貢編、医学・生物学におけるフラクタル、朝倉書店、pp180-195.

2) 小金澤雅之(2001) ハエ味覚受容細胞のG蛋白質共役型情報伝達系 比較生理生化学 Vol.18 No.3, pp149-158. 

3) Koganezawa M and Shimada I (2002a) Inositol1,4,5-trisphosphate transduction cascade in taste reception of the fleshfly, Boettcherisca peregrina. J. Neurobiol. 51: 66-83

4) Koganezawa M and Shimada I (2002b) Novel odorant-binding proteins expressed in the taste tissue of the fly. Chem. Senses 27: 319-332.

5) Sadakata T, Hatano H, Koseki T, Koganezawa M and Shimada I (2002c) The effects of amiloride on the labellar taste receptor cells of the fleshfly Boettcherisca peregrina. J. Insect Physiol. 48: 565-570.
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水波研究室 微小脳のシステム設計と計算原理の解明
 本研究室は、水波助教授の北海道大学電子科学研究所からの赴任により、平成14年4月に開設された新しい研究室です。現在のメンバーは、水波誠(助教授)、松本幸久(学術振興会博士研究員)、宇ノ木佐会(M1)、山方恒宏(B4)、渡邊英博(B4)の5名ですが、新しい学問分野を開拓すべく奮闘しています。

 昆虫の脳は、比較的少数のニューロンから構成されていますが、昆虫が示す行動は驚くほど多彩で高度です。水波は、小さな体での生活に適合した情報処理システムである昆虫の脳を「微小脳 (Microbrain)」という概念で捉えることを提唱し、その基本設計原理の解明への取り組みを進めています。現在の研究目標は、微小脳の最高次中枢であるキノコ体が嗅覚学習に果す役割の解析を通して、微小脳のシステム設計に迫ることです。具体的には、フタホシコオロギとワモンゴキブリなどを材料として、嗅覚学習行動実験、行動薬理学的解析、キノコ体ニューロンの匂い応答の電気生理学的解析、レーザ光による脳の微小破壊手術、共焦点レーザ顕微鏡を用いた組織学的研究など、多様な実験技術を駆使した統合的アプローチを進めています。

具体的な研究テーマの例

  1. 一酸化窒素シグナル伝達系が嗅覚記憶に果す役割の解析
  2. 嗅覚学習に伴うキノコ体ニューロンの活動変化の解析
  3. キノコ体の神経回路網の同定とその機能解析
  4. 触角感覚情報の前大脳における投射地図の作成
写真1 写真1

トピック1:キノコ体は昆虫の大脳皮質!?

 キノコ体は昆虫の脳の最高次中枢であり、匂いの記憶に関わることが知られていますが、私達はゴキブリを材料とした研究により、キノコ体が場所の記憶や運動の高次制御に関わることを示してきました。また、私達はキノコ体(高次中枢)に美麗な層構造があることを発見しました(写真1A)。キノコ体の出力ニューロンには明層か暗層のいずれか一方のみに樹状突起を広げるものがあり(写真1C)、層がキノコ体からの出力に関する機能的な単位であることが判ります。このような構造は哺乳類の大脳皮質の「機能コラム」を連想させるものです。各々の層が、どのような機能を担っているのかを研究しています。

図2 図2

トピック2:コオロギの頭を良くする薬!?

 コオロギやゴキブリでは、わずか1回の嗅覚学習訓練で学習が成立し、その記憶は数時間保持されます(これを短期記憶と呼びます)。コオロギやゴキブリは見かけによらす大変賢い生き物なのです。ところで、3回の学習訓練を短い間隔(例えば30秒間隔)で繰り返したときの記憶は数時間しか保持されませんが(詰め込み学習は効果が薄い)、3回の訓練を充分な間隔をあけて行うと(例えば5分間隔)、一生涯保持される長期記憶が成立します。私達はこの短期記憶から長期記憶への転換に一酸化窒素/cGMPシグナル伝達系(図2)が関わることを明らかにしました。さらに脳内に一酸化窒素を発生させる薬を投与すると、通常は短期記憶しか形成されない短い間隔での訓練でも長期記憶が成立することを見いだしました(註1)。さらに組織化学的な研究によってこのようなシグナル伝達系がキノコ体にあることを示唆する結果を得、現在これを証明する実験を進めています。

 註1:この発見はむやみに記憶力が高いことが必ずしも生存に有利というわけではないことを示している、と私達は考えています。コオロギの脳には(おそらくキノコ体には)、本当に覚える必要があることだけを選り分けて長期記憶へ転換させるための仕組みがあり、その仕組みを薬で操作すると、本来は覚えなくてもいいことまで覚えてしまうのです。記憶というものは大変不思議なものですね。

参考文献

1)水波誠 (1995) キノコ体は記憶の座である (分担執筆). 冨永佳也編、昆虫の脳を探る、共立出版、pp. 218-233.

2)Matsumoto Y. and Mizunami M. (2002a) Temporal determinants of long-term retention of olfactory memory in the cricket Gryllus bimaculatus. J. Exp. Biol. 205, 1429-1437.

3)Matsumoto Y. and Mizunami M. (2002b) Lifetime olfactory memory in the cricket Gryllus bimaculatus. J. Comp. Physiol. 188:295-299.

所在地

片平地区南キャンパス、南門を入ってすぐ右手の建物の1階奥。
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