Fiddlehead (of Ostrich fern)
Matteuccia struthiopteris:コゴミ(クサソテツ))

 

 春を五感で楽しむには、山菜をいただくのが一番でしょう。自分の手で野山からつみ取って持ち帰り、色や香りを楽しみながら山菜をいただくのは、春をこのうえなく満喫する事ができる幸せな瞬間です。その春の山菜の代表の一つがコゴミです(写真右)。コゴミはクサソテツというシダの若い葉で(写真左下)、バイオリンのペグボックスの先のスクロール(fiddlehead)のように「わらび巻き」になっている状態のものを、おひたしなどにして食用とします*注。クサソテツは北半球に広く分布しています。日本人はワラビやゼンマイなど、いろいろなシダを食べていますが、食用として利用されるシダ植物は決して多くありません。その中で、アメリカ、イギリスなど世界各地で広く一般に食用とされているのは、この種だけではないでしょうか。湿り気のある草原などに多く、まだ辺りが枯れ野原の様子の時から、春を告げるように新緑の芽を伸ばし始めます。

 

 コゴミをいただいた後、そのままこのシダを観察していると、次々と新しい葉をのばして、初夏には四方に長い葉を広げた立派な株に成長します。ここで普通のシダなら、葉の裏にたくさんの胞子嚢をつけるところですが、クサソテツの葉にはいつまでたっても胞子嚢らしいものは出てきてきません。それもそのはず、クサソテツの場合、胞子嚢をつける葉は、これまでに延びてきた葉とは全く別にできてくるのです。夏になると、今までの葉とはうって変わった、頑丈な櫛のような葉が延びてきます。この櫛の歯一本一本に、たくさんの胞子嚢が包まれています。秋には熟した胞子を辺りにたくさん散らした後、普通の葉は枯れてしまいます。しかし胞子嚢のついていた葉はとても頑丈なので、役目を終えて枯れた後も残り、次の春まで立ちつくしていることも珍しくありません。そのため、ドライフラワーなどに利用されることもあります。そして翌春、また同じ場所から、さらに前の年に延びたランナーからも春を告げるfiddleheadが顔を出してます。

*注;北米では加熱時間の短いコゴミを食べて、嘔吐、下痢などの中毒症状を呈した例が知られています。念のため、十分に(10分以上)加熱してから召し上がることをお勧めいたします。


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