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研究内容

次世代脳機能解析技術の開発


ウィルスベクターを用いた神経トレーシング法の開発

脳の機能を理解する上で、その神経基盤となる神経ネットワークの配線様式を知ることは大変重要である。しかし、従来の神経回路標識法では複数のシナプス結合を介して接続された脳の領域の結合関係を正確に調べることは困難であった。そこで、我々は特異的な感染様式を有する神経向性ウイルスに着目し、神経回路トレーサーとして用いることのできる組換えウイルスを開発した。この組換えウイルスはニューロン選択的に侵入し、シナプスを介してニューロンからニューロンへと情報伝達の流れに逆行して神経回路内を移動し、次々にニューロンに蛍光タンパク質を発現させる。これにより、正確に神経連絡の実体を標識することが可能となる。この組換えウイルスを用いて海馬を中心とした神経回路の構造を調べている。


 組換えウイルスベクターを用いた二重標識法の模式図(上段)、及び本手法により標識された海馬ニューロン(下段)
(Ohara et al., Front. Neuroanat. 3:1 2009a; Front Neurosci, 2009b, 3 (3), 344-9; Plos One 8(11), e78928 2013a)



(標的神経細胞選択的なカルシウムイメージング法の開発)

多数の神経細胞によって構成されるネットワークに基づいた脳の情報処理機構を解明するためには、複数の神経細胞の活動の同時観察が必要である。そのために細胞内Ca2+濃度センサーや膜電位センサーによる光学的計測法が有用であると考えられる。しかし、従来の光学的計測法では、計測した神経細胞が他の神経細胞とどのような結合関係を持つのかを同定することは困難であり、特定の領域に投射を送る、もしくは、受ける神経細胞群がどのような情報を表現しているかはわからなかった。そこで、本研究では、ある領域内の複数の神経細胞について、その投射先を同定したうえで、それらの活動を同時に計測するため、蛍光タンパク質と共にカルシウムイオンセンサーを発現する組換えウイルスベクターを作製した。このウイルスベクターを用いることで、異なる脳領域に投射を送る海馬CA1ニューロンの活動をカルシウムイオンセンサーの光シグナル変化として捉えることに成功した。今後、この手法を用いることで、脳神経回路のより詳細な研究が進むことが期待される。


  狂犬病ウイルスベクターによる二重標識 + Ca2+イメージング



(プラスミド注入による標的神経細胞標識法と遺伝子発現解析の開発)

行動と関連して個々の神経細胞がどのように活動するか、どのような細胞内タンパク質(受容体など)を発現しているか、そしてそれらの神経細胞がどのような形態で、どのような神経回路を構成しているかを調べることは行動神経科学の大きな目標の一つである。そのためには、動物の行動中に活動を記録した神経細胞を標識する必要があるが、これまで、長期間持続可能な単一神経細胞の標識法はなかった。そこで、単一神経細胞に、蛍光タンパク質をコードした遺伝子を含むプラスミドを、電気的に注入することにより標識する手法を確立した。今後本手法を用いて動物の行動と神経細胞の機能、遺伝子発現様式の網羅的解析、そして神経細胞の形態とを結び付けた解析を行うことで、個々の神経細胞のはたらきと、組織化学的特徴、そしてそれらが構成する神経回路の関連についての理解が進むことが期待される。


  プラスミド注入による単一神経細胞標識法により標識された細胞
  (Oyama et al., J Neurosci Methods, 218(2):139-47 2013)





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 生命機能科学専攻
  脳機能解析構築学講座
   脳情報処理分野



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准教授  筒井健一郎
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