大学院生・学生募集
●当研究室で研究をしたい院生・学生を募集しています。
学部から入りたい場合は、理学部生物学科を受験してください。3年生の後期から研究室に配属されます。
大学院から入りたい場合は、生命科学研究科を受験してください。生命科学研究科では受験前に指導教員とコンタクトをとる必要があります。
研究室に所属する院生・学生のテーマは、基本的に院生・学生が自由に選択することができます。研究室で行われているプロジェクトに参加することもできますし、指導教員と相談の上、自分で考えたテーマに取り組むこともできます。
●研究テーマ
以下のような研究ができます。ミクロからマクロまで幅広く扱っていることが特徴です。
ミクロ寄り
○光合成の生理生態学一般
光合成系は生育環境の変化に対して極めて敏感に応答します。この生理学・生化学的なしくみをタンパク質レベル・細胞レベル・葉レベル・個体レベルと様々なスケールで解き明かそうとしています。光順化や温度順化についてはインパクトの大きな研究をしてきました。光阻害や光防御のメカニズムが今一押しのテーマです。
○植物の環境応答・環境適応一般
植物が異なる環境にさらされたときの応答や適応機構を様々な観点から研究しています。これまでにも光環境・CO2・低温・高温・栄養・紫外線・隣接個体の影響・被食など様々な環境への応答を研究してきています。
○ジェノタイプ・エコタイプ間比較を利用した環境適応機構の解明
ジェノタイプ・エコタイプとは、同一種内で交配可能ながら、他の集団とは性質に違いが見られる集団のことをいいます。性質の違いは特定の環境への適応を反映していると期待されます。異なるジェノタイプを比較すると、特定の環境への適応機構を抽出しやすいと期待されます。シロイヌナズナ属、オオバコ、ブナ科植物など様々な植物を扱ってきています。
○突然変異誘発を利用した育種・進化実験
突然変異誘発により、特定の環境で優れた性質をもつ個体の単離を目指しています。これは農学など応用面の貢献が期待できる一方、生物進化を実験的に進めるという興味深い面もあります。
○植物の「知性」
植物は動かないし口をきいたりもしませんが、よく観察してみると意外に賢いふるまいをします。また、複雑な操作実験をすると、環境シグナルに一時的に反応しているのではなく、複数の環境情報を統合し、個体の利益に見合った複雑なふるまいをしていることもわかります。動物ならば脳がそのような情報統合を行っているのでしょうが、中枢神経系をもたない植物はどうやって情報統合を行っているのでしょうか。植物の情報統合を「知性」とみなし、新たな研究領域を切り開いていきたいと考えています。
○ゲノム・トランスクリプトームを利用した植物生理生態
エコゲノミクスやバイオインフォマティクスの研究者との共同研究により、ゲノム・トランスクリプトームとフェノーム(表現型)解析を組み合わせ、新たな研究領域を切り開いていこうとしています。
マクロ寄り
○植物の適応進化
植物は環境が変わると様々な変化を示します。なぜ変化を示すのでしょうか? それはたぶんそのような変化がその環境で生き抜くために有利なのでしょう。では、どういう意味で有利なのでしょうか? そこを解き明かしたいと考えています。
○植物の性質の種間比較
植物の種の間には様々な性質で大きな違いがあります。例えば光合成能力には二桁の違いがあったりします。植物の性質は種によってどのように違うのか、また、その違いにはどのような適応的な意義があるのでしょうか。
○地球環境変化と植物
CO2上昇や温暖化など地球環境は大きく変動しています。この環境変化は植物に様々な影響をもたらすと予想されています。どのような影響があるのか、また、その結果として未来の植物群集や生態系はどうなっていくのかということを予測しようとしています。
○植物の窒素利用
窒素は植物のからだを作るために必要な元素というだけでなく、光合成系タンパク質の材料でもあるため、炭素など他の元素の獲得にもかかわるという複雑な影響をもっています。植物はうまく窒素を利用するために様々な工夫をしています。例えば、枯れそうな葉から窒素を回収して新しい葉に転流するということをしています。こういった植物体内の窒素の利用様式を明らかにしていきたいと考えています。
○高標高環境・高山環境・高緯度環境への適応
高標高・高緯度といった環境は日本では身近にある「過酷な」環境です。特に高山は低温・積雪・風・紫外線など特殊な環境条件です。高山環境にしか見られない特殊な植物も多く、このような環境に適応するために植物が様々な性質を進化させてきたことが伺えます。近年私たちは高山環境で風衝環境や紫外線などの植物への影響を明らかにしてきています。
○湿原の生態学
高層湿原は、小さい面積の中に多くの種が共存する生態系です。特に、常緑/落葉、木本/草本といった異なる機能型に属する植物が共存しているという点が面白いと考えています。また、東北地方の湿原は森林の間に点々と存在しており、さながら海洋における島のようにお互いが隔離されており、進化や群集生態的な観点からも面白い生態系です。観光資源としても機能しており、社会的にも重要です。私たちは生理生態・群集生態・自然保護など様々な観点から湿原を解析していきたいと考えています。
○植物群集内の多種共存機構・生物間相互作用
湿原もそうですが、植物群集内には性質が異なる種が共存しています。しかし植物群集内では光や栄養などの資源をめぐって激しい競争が起こっています。どのようなしくみで共存が可能となっているのか、各種・各個体がどれだけ資源を獲得できているか、といった視点から競争・共存のしくみを明らかにしようとしています。
○植物の物質生産・植物を中心とした生態系の物質循環
植物は炭素や窒素を吸収し、結果的に自分だけでなく生態系の他の生物も養うことになります。環境や植物の性質の違いによって物質循環がどのように変わるのか、明らかにしたいと考えています。
○植物のかたちのコストとベネフィット
植物のかたちは様々です。例えば茎がある植物もほとんどない植物もいます。まっすぐの茎のもの、曲がってしまうもの。細長い葉のもの、水平な葉のもの。それぞれにはどのような意義があるのでしょうか。植物が吸収する資源の量(ベネフィット)とその資源を吸収するために投資する物質量(コスト)を定量したり、コンピュータシミュレーションを用いたりして植物のかたちの生態学的意義を明らかにしようとしています。
○植物機能のモデリング
植物の成長、植物群落の成長、植物群集内の相互作用、その環境応答などのシミュレーションモデルを構築します。このようなモデルが生態系全体で起こっていることの理解につながります。また、このようなモデルは生態系の物質循環の将来予測に利用されたりします。
○生態系操作実験
我々は相関関係から因果関係を推定することが多いのですが、本当にそのような因果関係があるのかを確かめるためには操作実験をしなければ証明できません。温暖化などの環境操作によって因果関係の証明を試みています。
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