園内の貴重な植物
 49haにおよぶ植物園内に自生する植物は、コケ植物58科156種・シダ植物12科44種・種子植物100科640種を数えます。モミ林内にはヒメノヤガラ・ホクリクムヨウラン・ユウシュンラン・カヤランなど、デリケートな生育環境を必要とするランの仲間がみられます。発達した自然状態が長年にわたって維持されてきたことを物語っています。レッドデータブック(旧基準)に載っている植物たちには,解説の後に,全国での現状・分布・危機の原因を書いています。これらは園内に自生あるいは栽培されています。

         ※レッドリストについては環境庁ホームページ内の「レッドリストについて」をご覧下さい。

                                                   →自生植物リスト
ヒメノヤガラChamaegastrodia sikokiana Makino et F.Maek. ラン科)
 九州~岩手県に分布する暖地性植物。産地はわずかです。葉緑素を持たず,根に共生(共棲)している菌類が落ち葉を分解して得た栄養を吸収して,生育する植物です。生育するには落葉落枝が供給され,土壌水分が安定に保たれる環境,つまりよく発達した森林が必要です。当園で採集された個体で花の詳しい構造がはじめて明らかにされました。

ホクリクムヨウランLecanorchis hokurikuensis Masam. ラン科)
 北陸地方から東北地方南部に分布。緑の葉を持たない腐生植物。スダジイ・ウラジロガシなど常緑広葉樹林の林床に生育します。花は褐色。園内ではモミ林の林床に見られます。

マツランSaccolabium matsuran Makino ラン科)
 九州~宮城県の太平洋側に分布。普通はスダジイ・ウラジロガシなど常緑広葉樹の幹に着生しています。当園ではモミの大木上部の幹や枝に着生しています。アカマツやクロマツの大木上部にもよく着生しています。着生植物は雨水や空気中の水分を利用しているので、森林がよく繁って安定していることが必要です。最近は大木が減少し、生活の場が失われて来ています。

カヤランThrixspermum japonicum (Miq.) Rchb.f. ラン科)
 九州~岩手県に分布。生育状況はマツランに似ています。花は淡黄色。暖地植物で宮城県では珍しい植物。

ユウシュンランCephalanthera erecta (Thunb.) Blume var. subaphylla (Miyabe et Kudô) Ohwi ラン科)
 ギンランの葉が退化して鱗片状になった変種。北海道から九州まで分布しますが、全国的にも稀。園内には比較的多くの個体が生育しています。

センダイトウヒレンSaussurea nipponica Miq. subsp. sendaica (Franch.) Kitam. キク科)
 オオダイトウヒレンの亜種。本州の関東地方以北に分布します。9~10月に紅紫色の花が咲きます。園内ではスギ林の林床に少数が見られます。仙台市が基準産地であることから、和名および学名に仙台の名を残しています。

スエコザサSasaella ramosa (Makino) Makino var. suwekoana (Makino) Sad.Suzuki イネ科)
 葉の片方が裏に向かって巻いているのが特徴。宮城県以北の本州に稀に生育しています。牧野富太郎が仙台市の丘陵地*で発見したササで、この地が基準産地となっています。和名および学名は富太郎の研究を支えた、すゑ子夫人に捧げられたものです。園内の林縁にややふつう。モミ林の一部で低木層を優占しています。
                  ※青葉区亀岡の亀岡神社と三居沢の間にあります。

オヤリハグマPertya triloba (Makino) Makino キク科)
 関東地方北部~東北地方だけの狭い地域に生育。植物園内では全域の明るい林床にややふつう。花は白色で9~10月に咲きます。

オオツルウメモドキCelastrus stephanotifolius (Makino) Makino ニシキギ科)
 九州~関東地方にまれ。林縁に生える落葉性のつる植物。園内では深沢や市道川内-旗立線沿いなどの林縁にややふつう。

サクラソウPrimula sieboldii E.Morren サクラソウ科)

 湿地に生育する多年草。花には花柱が長いものと花柱が短いものの二型があり、異なる型同士の交配ではよく種子ができますが、同じ型同士ではあまりできません。県内でも絶滅の危険があります。

危急種/日本・朝鮮半島・中国大陸東北部・シベリア東部/湿地開発・園芸用乱獲


カザグルマClematis patens C.Morren et Decne. キンポウゲ科)
 落葉性の木本つる植物。平地から丘陵地のやや湿った日当たりのよい地に生育します。花は5~6月に咲き、白か淡紫色。園内での現状は不明。

危急種/日本・朝鮮半島・中国大陸/宅地開発・園芸用乱獲


アツモリソウCypripedium macranthos Sw. var. speciosum (Rolfe) Koidz. ラン科)
 丘陵地から低山地の草原や林内に生える多年草。花は5~7月。形の面白さから園芸好事家に珍重され、盗掘されてしまいました。かつては県内でもスギ林などによく見られましたが、今ではほとんどありません。園内に栽培

絶滅危惧種/ユーラシア/開発・園芸用乱獲

コバノヒルムシロPotamogeton cristatus Regel et Maack ヒルムシロ科)
写真準備中  多年草。小型の水生植物で水中の沈水葉と水面に浮いている浮水葉をもちます。冬を越す芽は親株から離れて池の底に沈みます。種子は小型で水鳥の羽などに付着して散布されます。園内では火薬庫跡の水たまりにやや多数生えています。これは本沢の栽培株が逸出したものと考えられます。

危急種/日本・朝鮮半島・中国大陸/湿地開発・水質汚染

ヤマスカシユリLilium maculatum Thunb. var. monticola H.Hara ユリ科)
 山地帯の岩場・崖などに生える多年草。地域が限られています。園内で栽培。

危急種/日本(新潟・福島・山形・宮城・秋田県)/ダム建設による岩場の消失・園芸用乱獲

オキナグサPulsatilla cernua (Thunb.) Bercht. et C.Presl キンポウゲ科)
 日当りのよい草丈の低い草原に生える多年草。花期は4~5月。採草地の外来植物による人工草地化や、放棄による森林化で減少しました。園芸目的に盗掘されています。園内で栽培。

危急種/日本・朝鮮半島・中国大陸/草地開発・園芸用乱獲

ヒメシャガIris gracilipes A.Gray アヤメ科)
 平地から丘陵地のやや乾いた森林の林床に生育する多年草。シャガに比べて小型で、葉が細く全体にやさしい感じがします。淡紫色の花が5~6月に咲く。宮城県では夏鳥のカッコウが渡って来る頃に咲くので、カッコウバナと呼ばれています。仙台周辺では比較的豊富に生育しています。

危急種/日本固有種/園芸用乱獲

タコノアシPenthorum chinense Pursh ユキノシタ科)
 泥湿地・沼・水田・河原など水位の変動するところに生育する多年草。果実の時期が吸盤の付いた蛸の足のように見えます。県内でも比較的まれな植物。園内ではロックガーデンにやや多数自生。

危急種/東アジア/湿地開発

ミクリSparganium erectum L. ミクリ科)
 湖沼や河川・水路の浅水域に群生する多年草。とくに西南日本ではまれになっています。園内では実験池にやや多数生えています。

危急種/アジア・ヨーロッパ・北アフリカの温帯/河川や湖岸の改修

解説協力:東北大学野鳥の会 (データは1996年9月現在)

   
Copyright(C) 2007- Botanical Gardens, Tohoku University

サイト内の画像および文章の無断転載・引用を禁じます。