標本の作り方

1.採集

 
標本を作るために植物を採集すると言っても、ただでたらめに採ればいいと言うものではありません。採集に当たっては、一般に次のようなことに注意する必要があります。● 花や果実は勿論、小さな植物では地下部もそろったできるだけ完全な個体を採集するように心がけること。
●採取した植物の特徴や生育地の環境に注意し、それらをメモにとっておくこと。
● 美しいとか珍しいとかという理由だけで特定の植物を乱獲しないこと。また、付近の植生をできるだけ荒らさないように心がけることも大切です。
● 植物によっては、暗い所では花がつぼんだり、葉が折りたたまれたりするものがあり、そのような植物は野冊にはさむなどして採集時の形がくずれないようにしなければ良い標本は作れません。

植物採取をしている様子

スエコザサの標本

2.乾燥

 
採集した植物は、根についた土を落とす等の処理を行った後、押し葉にする作業にとりかかります。  植物体を直接挟むのが挟み紙で、これには半分に切った新聞紙が用いられます。挟み紙に折り込めるように植物を乗せ、枝、葉等がなるべく重ならないように形を整え、必要に応じて挟み紙からはみだした枝を折り曲げたり、二つに切り分けたりします。挟み紙には、採集日、採集者、採集場所等の必要事項を書き込み、押している間ずっと同じ物を使います。

 吸水紙は植物体を挟んだ挟み紙と同じかそれよりも若干大きめの厚い紙(本標本室では厚さ 2mm 位のものが用いられています)で、標本にする植物の含水量に応じて 1〜2 枚と調整します。吸水紙は湿ってくるごとに取り替え、乾かして(本標本室では電気乾燥機を使っています)再利用します。 この挟み紙と吸水紙を交互に重ね、それを押し台に乗せてその上に重みが均等にかかるように板を置き、最後に 10〜20kg の重しを乗せます。重しの重さは中の植物によって調節します。 吸水紙は始めのうちは毎日、乾いてくると数日に一回取り替えます。このときに挟み紙を開いて、植物の形を整えることが重要です。一旦乾いてしまうと、植物は標本として良い形になるように矯正することが出来なくなるからです。1〜2 週間押すと、押し葉標本が出来上がります。


3 整理と保存

 
このようにして作った標本は、いつでも必要なときに取り出して調べることができるように台紙にはりつけ、ラベルをつけて完全な標本にしておき、一定の順序に従って配列しておく必要があります。

 標本を貼りつける台紙は普通4つ折りの新聞紙より一回り大きめの厚手の上質紙(本標本室では 45cm×30cm、180kg の中性紙を使っています)を用い、それに幅 3〜5mm の薄く丈夫な紙のリボンで標本を固定します。セロハンテープを使うと簡単に止められるように見えますが、テープの周囲がごみで汚くなる上に、セロハンテープの接着面は数年で劣化して剥がれてしまい、長期の保存には適していません。紙のリボンを用いて標本を止める場合でも、同じ理由で劣化しやすい接着剤は使用できません。そのため、標本作製の際の接着剤には昔からアラビアゴムが使われており、本標本室でも昔はこれをリボンの接着につかっていました。現在では、薄い和紙にビニールをコーティングしたラミネート紙が専ら使われています。このテープのコーティング面を下にして、標本をおさえ、接着したいところを、上面から電気ゴテで熱を加えると、コーティングされたビニールがとけ、台紙にくっつき標本が固定されます。 ラベルには標本に必要な事柄を記入して、通常は台紙の右下に貼りつけます。本標本室では現在、次のようなラベルが用いられています。この例に見るように、公共の標本室では外国人でも読むことができるようにラべルの記載には英語が主に使われています。手書きのときは、字が永久に消えることのないよう使用するインクに注意し、ボールペンやサインペンは決して使ってはいけません。


標本ラベルの例(スエコザサ)



科名       Gramineae
種名(学名)   Sasaella ramosa (Makino) Makino var. suwekoana (Makino) S. Suzuki
種名(和名)   スエコザサ

生育環境    On sunny forest margin.
個体の特徴   (特になし)
採集地     JAPAN; Miyagi Pref., Sendai-shi, Aoba-ku, Kunimi-5-chome
        (仙台市青葉区国見5丁目)
        140。50'30"-40"E, 38。16'10"-20"N, alt. 120-130m.
採集年月日   14 Sep. 1992
採集者     Koji Yonekura
標本番号    No.1058



マイナス30℃の冷凍庫での殺虫

4.収納

 こうして出来上がった標本は、虫やカビがつかないようにして乾燥した所に保管し、一定の順序で配列しておきます。本標本室の場合、標本をまずマイナス20℃の冷凍庫に入れて殺虫し、それを種ごとに分けて標本台紙の倍の大きさの紙を二つ折りにしたカバーに挟み、標本庫の所定の柵に収納しています。

   
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