日本の植生

 地球上の植生分布については二つの見方があります。一つは南北両極に向かって、熱帯・亜熱帯・暖温帯・冷温帯・亜寒帯・寒帯の各気候帯に対応して帯状に成立する水平分布です。もう一つは海抜0mから世界最高峰のエベレスト山頂に至る、海抜高度に対応した垂直分布です。植物の分布は基本的に気温と降水量に対応しているため、水平分布と垂直分布はよく似た変化を示します。
 日本列島はユーラシア大陸の東端に位置し、南北およそ3,000kmにわたって弓状に連なっています。その大地のほとんどは、かつて緑なす樹海におおわれていました。果してそれはどんな森林だったのでしょうか? 残念ながら、その答えを出すのは難しいことです。亜熱帯から亜寒帯に至る気候の著しい変化、海岸平野から山地に至る地形の複雑さ、日本海側と太平洋側の積雪量の相違が、森の様相を変化に富んだものにしているからです。その上、人間の活動によって原生的自然のほとんどが失われてしまいました。このため、研究者の間でも、いまだに見解の統一が得られません。

ここに掲げた植生図は、吉岡邦二(1973)から描いたものです。

高山植生

 低温・強風・紫外線・土壌の凍結融解・生育期間の短さなど、環境条件の厳しい場所に成育します。植物の生長は極めて遅く、植生は多くの場合モザイク状に分布します。冬の北西風がもたらす積雪のため尾根筋の西側には風衝草原やハイマツ低木林が、東側には雪田植生といわれる湿生のお花畑が見られます。砂礫が激しく移動する場所は高山荒原と呼ばれます。

←栗駒山山頂(1996.9.28)
常緑針葉樹林(亜寒帯・亜高山帯)

 北海道の東半分には、常緑の針葉樹であるエゾマツ・トドマツ・アカエゾマツなどからなる針葉樹林が分布しています。また、本州の亜高山帯にはシラベ・アオモリトドマツ・シコクシラベなどからなる森林が分布しています。

←八甲田山大岳下部(1995.9.30)
北方針・広混交林

 落葉広葉樹林帯と常緑針葉樹林帯の境界域に存在する移行的森林です。

←富良野山樹海峠(1989.8.21)
落葉広葉樹林

寒く乾燥する冬の間は落葉・休眠している広葉樹からなる森林。水平分布においては冷温帯の、垂直分布においては山地帯の気候的極相林として分布します。しかし、北に行くにつれて分布する海抜高度は下がり、東北地方北部や北海道では平地に分布します。熱帯などで乾期に落葉する雨緑樹林と区別するために夏緑樹林とも呼ばれます。ブナ・ミズナラ・シナノキ・ウダイカンバ・カエデ類などが主な構成種です。

←鳴子早沢(1994.9.4)
モミ・ツガ林

 常緑針葉樹であるモミやツガが高木層に混交する森林が、常緑広葉樹林帯(暖温帯)と落葉広葉樹林帯(冷温帯)の間に存在します。この「中間温帯」とも呼ばれる境界領域の森林については、まだ不明な点が数多くあります。青葉山のモミ林はカシ類を混交する巨木の森としてはもっとも北に位置し、この中間温帯成立のなぞを解き明かす貴重な森です。

←丹沢札掛(1989.12.20)
常緑広葉樹林

 冬期の気温があまり下がらないので植物の生育に障害とならず、一年中緑の葉をつけている広葉樹林。水平分布では雨の多い亜熱帯や暖温帯の気候的極相樹林です。垂直分布では平地帯から丘陵帯に分布します。初夏に新しい葉が展開してから古い葉が落葉します。葉の表面にクチクラ層が発達して光沢があるので、照葉樹林とも呼ばれています。

←沖縄与那→照首山

   
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